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LLFK-vol66 シーズン7 design WHAT IS ORIGINAL,WHAT IS DESIGN ?

Season7「design」WHAT IS ORIGINAL,
WHAT IS DESIGN ? 2023年6月29日

デザインとは何か?シーズン7では10回に渡ってこのテーマを追いかけてきました。できるだけ身近な場面をこの視点で見ていけば色々な発見があるだろうと、韓国に行ったり・手土産について考えてみたり・持ち物を見つめ直してみたりしました。

僕なりに、わかりやすく、面白いデザインの世界をお届けするつもりで執筆してきました。嘘はつかないというのがLLFKのモットーですので、正直にお伝えします。実は僕自身、なかなかに苦しんだシーズンでした。好きな分野だからきっと楽しめるだろうと思ったのですが、全くの逆。好きだからこそ、どこか力が入ってしまって、お見苦しい所を見せてしまったかもしれません(涙)。

こんな状況の人間が何か語ったところで…これはもしかして5月病か!? いや、もう6月だし…。これはもう「初心に戻って、勉強するしかない。」心の声がそう叫んでいる。こういう時は、そうだ、美術館だ。行こう行こうと思っていた、東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SITEの展示会「The Original」。頭を空っぽにして、とりあえず良きデザインと対峙してみよう。そうしたら何か起こるかもしれない。

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The Original

本展では、世の中に深く影響を与えるデザインを「Tre Original」と定義し、紹介します。ただし、ここでいう「The Original」は必ずしもものづくりの歴史における「始まり」という意味ではありません。多くのデザイナーを触発するような、根源的な魅力と影響力をそなえ、そのエッセンスが後にまでつながれていくものたちです。

本展覧会のディレクター、デザインジャーナリスト土田貴宏氏は、こうメッセージを投げかけています。
“私たちの暮らしを取り囲む、きわめて多様なデザインの数々。それらのなかで、オリジナルという言葉にふさわしいものはどれくらい存在するでしょうか。確かな独創性と根源的な魅力、そして純粋さ、大腿さ、力強さをそなえたデザイナーによるプロダクトを、この展覧会では「The Original」と呼びたいと思います。
The Originalは、ひとつの点にたとえることができます。その点に十分な影響力があれば、点は線へ、さらに面へと展開するでしょう。つまり後に続くいくつものデザインが、原点に対するバリエーションとして長期にわたり生まれていきます。やがてひとつの点は、時代の中で見えにくくなってしまうかもしれません。しかし生活を本質的に豊かにしたのはThe Originalであり、そこに宿ったオリジナリティの力です。
オリジナリティという概念は、さまざまに解釈することができます。そもそもあらゆるデザインには、何らかのオリジナリティがそなわっているようにも思えます。だからこそ、この展覧会であらためて紹介するのは、既存のプロダクトから現在の視点によって見出した「これはThe Originalではないか?」と考えられるものです。つまり1点1点の展示品はそれを観る人への問いかけであって、必ずしも歴然とした答えではありません。テキストや展示空間はじめ展覧会全体を通して、このテーマの輪郭を明らかにできたらと思います。”

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中に入ると、数々の名作が騒然と並んでいますが、順番通りに書かれたキャプションを淡々と読んでいくタイプではなく、自由に見たいところから、オリジナル探しの旅に出てくださいねというレイアウト。そして特徴的なのは、新しいものと古いものが隣同士あったり、混在している点。歴史的なプロダクトでも新しく見えたり、その逆もしかり。時代性の価値観は捨てて、自分の尺度で楽しめるようになっています。

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モヘアの毛皮や動く手足をそなえた現在のようなテディベアは、ドイツのシュタイフで最初につくられたそう。本物のクマをモチーフに、どこをリアルに表現し、どこをデフォルメし、どこを省くか。それらの絶妙なバランスを生み出すには相当な苦労があったでしょう。「かわいい」の概念を更新した、歴史的なオブジェとして見えてきます。

バウハウス時代のプロダクトは、現代のプロダクトに大きな影響を与えたと言われています。ただ、それらひとつひとつにも時代的な背景があり、例えばシンプルな形は、それまで装飾的な流行をどうにかしたいという野心的な感情から生まれたものも少なくありません。

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WMFのソルト&ペッパー ヴェーゲンフェルド。特に変哲のないソルト&ペッパーに見えるかもしれません。くびれたボディが指先でつまみやすい2つのガラス容器が、ステンレスのトレイに並んでいます。現代において、このシンプルさはスタンダード。しかし、造形学校バウハウスで学んだヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルドによる造形には、伝統を脱しようという意志が宿っていました。

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アンジェロ・マンジャロッティの「エロス」シリーズ。彫刻作品のようなコーヒーテーブルは、大理石のテーブルトップを脚にはめ込み、その自重と重力を安定したバランスへと導いています。

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私達の身近な所にも既成概念を更新させてくれるものたちは多く存在します。「カロリーメイト」は、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルのバランスを考えてデザインされた栄養調整食品。ただし味わいや食感も重視されています。ブロックの10個の穴は、焼き上げる時に均一に火を通すためのもの。またカロリー計算がしやすいように、ブロック1本がちょうど100kcalになっています。

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ジャスパー・モリソンが手掛けた、「プンクト MP02」。スマートフォン全盛の今日ですが、デジタル化による情報やコミュニケーションの増大はストレスと切り離せません。ジャスパー・モリソンがデザインした携帯電話は、そんな状況からユーザーを守ろうというものです。思わず手にしたくなるサイズや立体感は愛着を喚起する要素であり、一般的なスマートフォンの形状が必ずしも人間的でないことに気づかされます。

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マーナから販売されている「おさかなスポンジ」。魚のモチーフは、キャラクター性を与えることだけが理由ではありません。握りやすく、コップの底も洗いやすい、実用に即したかたち。さらに「おさかなが暮らせるきれいな水を残したい」という思いも込められています。日本で初めて立体商標として登録された食器用スポンジです。

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コンスタン・グルチッチがデザインした「MAYDAY」。置いても、掛けても、品るしても、手にもっても使える照明器具。広い範囲をもち運べるように、コードは約5mの長さがあります。
シェードやハンドルの形状は多様な使い道を率直に反映しており、長いコードはハンドルに巻きつけられます。機能重視でありながらアイコニックな現代の傑作。

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こちらは、パーテーションとしてデザインされた「アルギュ」。デザインはロナン&エルワンブルーレック。1ピースにつき19個ある穴にピンを通して連結することで、「アルギュ」のつくる面は大きさを自在に変えられます。空間をはっきりと仕切らず、光や音を通すのも特徴です。自由度が高く、コミュニケーションを阻害しない壁。海藻状のユニークな形状に加えて、その発想に新しさがあります。

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デザインのオリジナリティは、目に見える部分だけで表現されるとは限りません。展示の中には、触れたり、座ったり、動かしたりすることで、個性を実感できるドアハンドルや椅子も。
過去から現在にいたるまで、多くの建築家やデザイナーが、ものを総体的・包括的に捉え、時には、感触、動き、仕組みといった所にオリジナリティを光らせ、デザインを手がけてきました。

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デザインに触れる喜び

普段、展覧会を見終わった後というのは、どことなく映画を見終わった後のような感覚に似ていて、メッセージに対して深く感心したり、傾倒したりするのですが、今回の展示会は何と表現して良いか言葉選びに困るくらい「ぽかーん」としてしまったのです。暫くすると、徐々に湧き上がってくる「楽しさ」が。「デザインって楽しいんだ。」そう素直に思えたのです。

理由の大きな要因のひとつは、今回の展示作品の全てが「今も購入できること」。生活様式が目まぐるしく変化する現代の社会では、そのデザインのエッセンスを見失いがちであるだけではなく、あふれる情報の中で、それに出会おうとする意欲すらも薄れてしまっているかもしれません。

「The Original」をたどること。
世界の流行や潮流に適応することではなく、時間を超えて、それらを生み出したデザイナーたちの閃きと「つかうこと」で繋がる事ができる。それらが、自分の生活の中にあることで、思考や行動の栄養源になってくれる。それは紛れもない豊かさに違いない。

そう、デザインは楽しいものなのです。

Season7 おわり

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和田 健司 オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。(インスタグラム:@k_enjiwada