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LLFK-vol52 「偶然の日田」 ーまたくるね編ー

Season6「旅」「偶然の日田」 ーまたくるね編ー 2022年7月29日

心に残る旅は、偶然訪れる。何も知らされることなく、大分入りをし、僕の目の前に現れた「日田」。出会ってまだ3時間も経っていないのに、話を聞いている内にどんどん詳しくなっていきます。

うらやましさ

目の前に広がっているのは筑後川。この辺りは戦国時代末期から城下町として開かれ、江戸時代には幕府の直轄地「天領」だったようです。町家や宿屋が多く連なり、九州においての貿易の拠点として非常に栄えた場所だそう。ここ「和くら」さんも、元々は「ヤマキチ」として、日田で一番の製材所として名を馳せ、大正6年に土蔵(現・和くら)を建てられました。

食事を終え、コーヒーを少し特長的なマグカップで頂きます。手にすっと馴染むフォルムと質感。見た目とは裏腹にとても優しい。この焼き物も、この地方で作られている「小鹿田焼(おんたやき)」。1700年の歴史を持ち、“すぐそばにある器”として親しまれ、日田のご家庭の食器棚には必ずあると言われています。

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海の幸もあって、山の幸もある。そして愛すべき器があり、誇るべき土地のストーリーがある。「土地を語れるって素晴らしい…本当にうらやましい。」心の底から声がした。それと同時に、こんな事を考え出してしまった。“もし誰かが、こんな風に、自分の住んでいる土地に来たとして、同じように案内ができるだろうか?ストーリーを語れるだろうか?”と。きっと僕にはできないし、今住んでいる所は、心底好きな場所でもない。なぜなら、仕事が理由で選んだ場所だからです。こういう方って結構いるのかもしれません。

たとえ、生まれた場所でなくても、惚れ込んだ土地で暮らしていれば、自然と何かは語れるようになってくるはず。僕にはそれがない。旅をしていると、その土地に住んでいる人達が、とても羨ましくなります。あなたは、今自分の住んでいる土地が好きですか?その場所を誇らしく思えるでしょうか?

竜宮城

「店を出て、川沿いを少し歩いていただくと、ネオンが光っている“ひなのさと”というホテルがあります。そこが今夜の宿です。」店長さんの一言に、ふと気付く。そうだ!どこに泊まるのかも知らなかったんだ。「すぐ近くなので、明日良かったら朝ご飯を召し上がりに来ませんか?」そんな有り難いお言葉まで頂き、ありがとうございます、と甘える事に。ここは竜宮城か?なんて内心思いながらホテルへ。外に出ると、満月。外には誰も歩いていません。ちょっと散歩でもしましょうか、と川辺をブラブラと歩きます。

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「なんか、この橋を渡って戻ってきたら、平行宇宙へ突入しちゃいそうですよね。」「朝起きたら、実は今日の出来事はなかったことになってたりして」「癒されますけど、不思議と異空間のような感覚に襲われるんですよね。磁場が凄いのかなぁ…。」ちょっと不思議な日田の雰囲気に包み込まれながら、3人で談笑しながら向かいます。あ、ここだ。と出迎えてくれたのは…

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aibo。夜なので寝ています。そして横に、電気グルーヴの特集本。なかなかな組み合わせ。「こちらに住所をお書きください。」とチェックイン。ペンは…

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おぉ…これか。いやいやいや、どんなペンでも書きますよ。例え恐竜だろうが、どんとこい。今日は不思議な日だった、部屋でゆっくりしよう。そうしよう。

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これは、大分県民割なのでしょうか。宇宙人割なんて聞いたことないし。そして自己申告。このホテル、ただものじゃなさそうだぞ。

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そろそろ、情報量が多すぎて頭がこんがらがってきましたよ。ヒターバックス…。僕は、7階のアインシュタインフロアのよう。

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いや、部屋は普通なんかい!でも広くてくつろげそうです。ここはどんなテーマのホテル…いやいや、そんな事を考えるだけムダ。ここはそんなものは超越しています、それくらいのインパクトがある。

ホテルってある程度統一感というか、テーマのようなものがありそうじゃないですか。きっとそういう場所ばっかり行ってるから、それが当たり前になってしまうんでしょうね。「もっと高次元においでよ」と言われんばかりの…やっぱり竜宮城に来てしまったか(笑)。よし、風呂でも入って寝ようと温泉フロアへ。

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おっとっとが2つ…。まぁいい、ここはそういう所。

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こ〜れは、さすがに無視できない。僕に課せられた試練だ。解かずに帰る訳にはいくまい。きっと、ゆっくり温泉に浸かって考えてくださいという宿主の配慮だ。

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日田は水が綺麗なのが有名らしく、とてもまろやかな温泉。心身共にほぐされるので、きっとあの謎が解けるはず。皆さんは、わかりましたか?

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サイダー、ミッツマングローブ、せんだみつお、三菱、ハチミツ、壇蜜・・・みつ・・・全部“みつ”が付く!!なぜ、“みつ”??脱衣所が三段だから?いやそんなはずはない。そして、以後この謎が解き明かされる事はありませんでした。うーん、みつ・・・みつ・・・。おっとっと、部屋にもあるし〜!・・・これは、ひとつ。・・・ふたつ。みっつ。・・・もうだめだ、おやすみなさい。

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タネアカシ

「ははは!(笑)あれから、そんな事があったんですか!実はね、大分ってUFOの目撃がものすごく多くて。数年後に大分空港にアジア初の宇宙船発着所もできるんですよ。」翌朝、昨晩の数奇な出来事を話しながら、ビタミンたっぷりな朝食をいただきます。竹をそのまま割っただけのお箸もSTIIKに通ずるような軽さで、これまた良し。日田、静かでいてインパクトの強い場所。是非、皆さん一度訪れてみてください。友人や家族に教えたくなってしまう魅力が詰まっていますから。

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帰り際に、鷲見さんに「よくこんな所知ってますね?凄いっすね。」と聞くと、「僕も初めてよ。」と。「えっ!じゃあ昨日からの…は?」「そう、全てアドリブで起きた出来事。」呆然とした僕の顔を見て、小柴さんも大笑いしています。鷲見さん曰く「和くらさんは、以前ちょっと紹介されてお会いした程度で、日田がどういう街なのかも、大分県さえもほぼ知識なく初めて訪れたのです。面白そうな日田の人たち、ということだけを信用し1点突破で二人をお連れした、まあ今思えばメチャクチャなコーディネートだったわけ。ということで、僕はちっともツアコンしてなくて、楽しませようとして計画を練ったわけでもなく、一緒にワーワー驚いただけなのでした。」と。

恐るべし、偶然の旅。それから、またくるね日田。

つづく

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和田 健司 オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。