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LLFK-vol34

Season4「ヒト」足るを知る2021年9月17日

みなさんこんにちは。なんだか急に涼しくなりましたね。もう一回位暑い日は戻ってくるのでしょうか、それとも…。さて、先日から健康の話をしています。自分としては、何もないようにクリーンに過ごしていくのではなくて、多少悪い事があってもそれが自分の耐性を作ってくれるんだと歓迎しようと。やっぱり一病息災なんだなぁと書き終えてしみじみしていた日に、まさかこんな事になるとは思ってもいませんでした。

見えない

それは突然訪れました。数日前にエレベーターの中にある鏡を見て「なんか目の下の方が充血してるな。」と。痒くも何ともないし何て事はないだろうと思っていたら、みるみる目は真っ赤に。エッセイを書き終えた日の朝から両目が腫れて開かないしずっとよくわからない液体が目からが出ている。視界がぼやけている中なんとか撮影をし、エッセイを書き終えました。やり終えたと体が感じ取ったのか一気に悪化をしまいまして。ヒトって実家に帰った途端に風邪をひいたり、ほっとすると具合が悪くなったりするもんだよなぁ、と思いながら眼科へ。

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「あぁ、これはウイルス性の急性結膜炎ですね。」と医師に告げられ、抗生剤と眼帯を渡されました。軽快な口調だったので、すぐ治るんだろうなって思っていた自分が甘かった。そこから真っ暗な日々が2週間弱続こうとは。あまり具体的な描写は控えますが、簡単にいうと目の中に入ったウイルスと眼球との戦いです。パンパンに腫れ、目についた傷で痛みと眩しさで目が開けていられませんでした。ご飯を食べて、寝て、目薬をさして、またご飯という毎日が続きました。

イート・インザダーク

ご飯はすくう時だけ半目を開け、味わう時は目を閉じます。最初はお腹を膨らますだけで苦痛でしたが、日が経つにつれて目をつぶって味わうことを楽しむようになりまして。食べていると「これはキュウリか?」とか「タレの香りの後に味が来るな。」など口の中が空間的に感じたり、例えるなら口という真っ暗なウォータースライダーに、ゆっくりと食材が流れていくのを感じ取っているとでも言いましょうか。甘い、辛いとかではなくそこに空間が発生するようなイメージです。今までより味の滞在時間が長く感じて、味覚に次元が増したような感覚に。

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五感のうちひとつが塞がれると、他の四感でそれを補おうとするという話は読んだ事があります。奇しくも丁度パラリンピックが開催している時でして、障害があるにも関わらずプロレベルのスポーツをやろうと思う心だけでもおそらく健常者より超人的なんだなと率直に感じました。絶対に僕は挑戦しようともしないでしょう。ましてやそれで試合をして金メダルを目指すなんて…。

現代人は目で生活をしている

テレビ、スマホ、PC、発光する画面の全てが眩しくて見れません。見えるのは薄暗い空間の中にある紙や雑誌。それらは全てインプットの道具で、誰かとコミュニケーションできるものではありません。いかに自分の生活が光る画面に支配されているかという事にその時初めて気づかされたのです。それが遮断された時、誰とも連絡できなくなってしまうのは結構危険な事ですよね。

寝ている時間が長いと、眠くなくても目を閉じている時間が増えます。目を閉じているとひとつふたつと考え事が浮かんでは消え、半ばずっと瞑想をしているような状態に。検索したりできないので、割と簡単に諦めがついたり、まとまったりするのですが、それをメモしようとするとペンと紙が常に手元に必要に。携帯に…と手に取ると眩しい。脳に直接回路を埋め込んで、思ったことを記録したり遠くの誰かに伝えたりできる「画面のない体内パソコン」を組み込めないか!と何度思った事でしょうか(笑)。

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いつもがあるって

モヤがかかったような期間を経て、ようやく回復の兆しが。薬も効いてきたようで、今もこうして文字が書けるくらいに目が元に戻ってきました。いつもの料理がちゃんと見える!ようやくスマホの文字が読める!なんて一喜一憂しています。いつもやっていたことができるって、本当にありがたい。「足るを知る」という言葉がありますが、恵まれた生活をさせてもらっているなんてこういう体験でもしない限り芽生えない感情なんだろうなぁ。何もやることがない休日の昼間、ソファーに寝転がって、いつものカップでコーヒーを飲みながらいつもの景色を眺める。いつものルーティーンがある。人間にとって、これが何物にも代えがたい幸せなのです。

つづく

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和田 健司 オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。