愛犬の「いわて」を抱き、笑顔を見せる川瀬隆庸社長=大阪市住吉区

愛犬の「いわて」を抱き、笑顔を見せる川瀬隆庸社長

 「あなたの愛犬が元気に20歳まで生きるために」をコンセプトに、無添加食材を使用したドッグフードを販売するペット用品店が大阪・帝塚山にある。1989年創業の帝塚山ハウンドカム(大阪市住吉区)だ。フードのみならず、犬の毛のトリミングやデンタルケアも手がけている。「フードの販売を通じてペットの食事の大切さを伝えていきたい」と語る川瀬隆庸(たかつね)社長に事業にかける思いを聞いた。

(学生通信社 同志社大学法学部 磯部亮太)

愛犬の健康 食事で守る

 ――レンタルレコード店からペット用品店へ衣替えした

 「大学を卒業し建築会社に勤めた後、レンタルレコード店を開業した。支店を展開するまでに成長したが、84年から貸し出しに規制がかかり新譜を扱えなくなったため、レコードへの情熱を失った。そんななか、アフガンハウンド(アフガニスタン原産の長毛の大型犬)をペットとして飼い始め、世話に情熱を注ぐようになった。次第にペットに関わる仕事がしたいと思うようになり、帝塚山ハウンドカムを創業した」

 ――犬の体に合ったフードを販売している

 「生肉や発酵野菜を使った、無添加のドッグフードを取り扱っている。犬はもともと肉食動物で腸が短いため、消化器官にあった餌を与える必要がある。栄養バランスの整ったドッグフードでも、防腐剤を添加したり乾燥処理をしたりすると、消化吸収の効率が悪くなり犬の体に合わないことが多い。無添加のドッグフードなら添加物が原因で起こるアレルギーや湿疹もない。さらに栄養素の吸収効率を上げるため、あらかじめ酵素分解した発酵野菜を使用している」

 ――自身の経験から食事の大切さを実感したと聞く

 「子供のころからぜん息で、大人になっても年に数回、発作に苦しんでいた。薬以外の治療法を探していたところ、出合ったのが食事療法だ。揚げ物や菓子を控え、玄米菜食を中心とした食事をとる生活を8カ月続けてみると、ぜん息が治まった。お客さまの愛犬にもアレルギーや湿疹に苦しむ犬が多かったため、自身の経験をヒントに手作りの無添加ドッグフードを試してもらうと、2カ月ほどで体調が良くなった。お客さまの『ありがとう』の声がうれしく、93年から無添加ドッグフードを本格的に取り扱い始めた」

 ――デンタルケアが好評だ

 「ペットの口臭や歯周病に悩むお客さまは多い。主な原因は歯についた歯石だ。従来犬の歯石の除去は獣医師が麻酔をかけて行うが、麻酔に抵抗のある飼い主が多かった。当社では麻酔を使わず、歯石取りと歯のマッサージをするデンタルケアを行っている。長年犬のトリミングをしてきた経験から犬を落ち着かせることが得意なため、麻酔を用いなくても歯のケアを行うことができる。08年の事業開始以来、口コミが広まり、青森や高知など遠方からもお客さまが来るようになった」

 ――今後の展望は

 「生肉を使ったフードの販売にさらに力を入れたい。今年4月には事務所を移転し、フードの在庫を保管する冷蔵庫を増設した。ペットの健康で悩むお客さまに、薬に頼るだけでなく、食事と生活スタイルで体調を改善できることを知ってほしい。フードの販売を通して、ペットにとって本当に良い食事をお客さまに伝えていきたい」

2014年9月8日付「フジサンケイビジネスアイ」西日本版掲載