昭和20年、まだ赤ん坊だった会長松江伸武は両親と幼い姉とともに大阪で空襲に遭い、裸同然、命からがら米子へ疎開してきました。
未知の土地での生活の苦労、生きるため慣れない鮮魚の行商を始めました。ボラ3匹からスタート。

(ありったけのお金で買えたのがボラ3匹でした。)

魚を包む物が無く、風呂敷に包み一軒一軒と回り3匹売れた時は昼を過ぎる事も度々でした。父が仕入れをし母が幼子の伸武を背負い姉の手を引きながらの行商です。

大阪から疎開してきた新参者で信用もなかった父と母は八百屋さんや魚屋さんに行き、店先の掃除をさせてもらうことから始めました。売れたお金で翌日の魚を仕入れるというささやかな商い。それでもわずかながらゆとりも生まれるようになり、行商の足も徒歩から自転車、そして大八車へと変わり、やがて店舗まで構えるまでに安定しました。

「漁師さんが命をかけて獲った魚を無駄にしたくない」

そう考えた父松江秀男は、水産加工業に転身し、昭和33年に松江商店の看板を掲げました。自宅横の狭い作業場で、来る日も来る日も寝る間も惜しんで干物の塩加減、水や氷の加減、干し方などを工夫し、家族全員で干物づくりに励みました。当時、両親は伸武を諭すように「食べ物の道理」を説いたそうです。

食べ物を扱うというのは、人様の命と生き物の命、
両方を預からせて戴いているんだよ。

創業の父・松江秀雄
雪の降ったあとトラックの前にて

このころから変わらず、ひとつひとつに まごころ込めておとどけしています

「魚や米の命を食べることで人間は自らの命を養わせてもらっているんだ。すべての生き物に感謝の念を忘れず、食べ物をつくらせていただかなくてはいけない。」 両親の言葉がやがて「健康によい食品を創る」という創業の原点になりました。

日本海から吹きつける寒風が肌を刺すような冬の早朝。父は伸武少年をたたき起こしました。

「風が息をしおる。旨い干物ができるぞ」

指先がしびれてたちまち感覚を失うような寒さの中、家族総出でカレイを干しました。干物づくりにとって最上の季節はわずか一か月。それだけに一刻たりとも、自然の力を逃すわけにはいきません。

そんなある日、カレイの一夜干を買ってくださったお客様が
「あんちゃん、うまかった」
と声をかけてくださいました。

うれしくて、うれしくて、疲れも吹き飛ぶほどでした。

そのときの美味しかった味をこれからも引き継ぎ、鳥取県からまごころ込めてお届けしていきます。