鞄の主な素材

鞄には牛革や合皮、ナイロンといった様々な素材が使われています。高級感があって永く使いたいなら牛革、軽くてお手入れが簡単な方がよければナイロンなど、用途や希望によって選び方も違ってきます。それぞれのメリット・デメリットを理解して、自分に合った鞄選びの参考にしてみてください。 以下に当店で販売しております鞄の主な素材の特徴をまとめてみました。

本革上品さと味わいの本革

種類や加工、仕上げなどで印象が変わる

本革素材と言っても、さまざまな種類があります。代表的なものとして牛革がありますが、他にも馬、豚、羊、ダチョウ(オーストリッチ)、ワニなどの革が一般的に使われています。当店で使用している革は殆どが牛革です。
本革素材は、加工や仕上げによって見た目や風合いが大きく変わります。革を収縮させてシワを強調したシュリンク加工、革の内側を起毛させたスエード加工、プレス機で表面に凹凸をつける型押し加工、なめす(製革)時にオイルを染み込ませてしなやかさと耐久性を増したオイルレザーなどがあります。

本物だからこその高級感と、使い込むほどに出る味わい

本革素材のメリットは、本物だからこそ醸し出される高級感。上質な革、希少な革であれば、更に高級感が増します。そして、使い込むほどに艶が出たり柔らかくなって個別に独特の風合いが出てきます。これを経年変化(エイジング)と言って、革ファンを魅了する大きな要因となっています。特に、仕上げ時の加工を少なくして天然の風合いを持たせた「ヌメ革」は、経年変化がより楽しめる革素材として知られています。良質な革素材は、手入れをしっかり行うことで、何十年も使い続けることができます。
一方、デメリットとしては、天然ものであるが故の高価さ。そして手入れが面倒なことや、バッグの重量が重くなりがちな点です。一般的な革の場合、水に濡れるとシミが残ったり、汚れが落ちにくかったりする点も気を付けなければならない点です。

革のお手入れ方法

  • 汚れを落とす

    鞄表面のほこりや汚れを革用のブラシや柔らかい布で優しく落とします。
    汚れがひどい場合は、固く絞った濡れタオルで拭き取って乾燥させます。

  • オイル(クリーム)を試し塗りする

    きれいな布に革用のトリートメントオイル(クリーム)を少量取り、底などの目立たない場所に試し塗りをします。

  • オイル(クリーム)を全体に塗る

    乾くまで待って問題がなければ、トリートメントオイル(クリーム)をバッグ全体に薄くさっと塗ります。塗りすぎると染みになってしまうこともあるため、少しずつ塗布することが大切です。手で触ると少ししっとりする程度が目安です。

  • 乾拭きをする

    トリートメントオイル(クリーム)を塗り終えたら、暫くおいて染み込ませます。最後に乾いた布でもう一度優しく拭きあげれば、お手入れは完了です。

  • もしも水に濡れてしまったら

    革は、カビの発生が一番の天敵です。水に濡れてしまったら、すぐにタオルで拭いて日陰の風通しの良い場所で乾燥させてください。ドライヤーや送風で乾燥させるのは表面にひび割れを起こす原因となる場合があるので厳禁です。

革のお手入れをする時の注意点

  • 清潔な道具でお手入れする

    布やブラシなど、お手入れで使用する道具はきれいなものを使用しましょう。汚れた道具を使用すると、お手入れのつもりが逆にバッグを汚していたり、傷を付けてしまう場合があるので注意しましょう。お手入れ後の布やブラシも、洗って汚れを取っておくことをお忘れなく。

  • トリートメントオイル(クリーム)は適量を守る

    トリートメントオイル(クリーム)を塗りすぎると、カビやシミの原因となる場合があります。オイルを塗る時は、たっぷり塗りつけようとはせず、少量ずつを取ってできるだけ薄く均一に伸ばすことが大切なポイントです。塗りすぎたら拭き取りましょう。

レザーバッグの保管方法

レザーバッグを長持ちさせるには、お手入れに加えて保管方法も大事です。暫く使わない場合はお手入れをしてから保管しておきましょう。


  • レザーバッグの保管に適した場所

    直射日光の当たらない、風通しのよい場所に保管しましょう。湿気の多い場所ではカビが生えやすくなるため、ご注意ください。

  • できれば置くより吊るして保管を

    クローゼットなどの中では、引き出しに入れたり棚に置いたりするより、ハンガーやS字フックなどに吊るして保管する方が長持ちしやすいです。置いておく場合には、バッグの中に段ボールなどを入れて型崩れしないように気を付けましょう。

  • 使うこと自体がカビ対策に

    レザーバッグは使わずに保管し続けるよりも、使うこと自体がカビ対策になります。外気に晒すことでカビの増殖を抑える事に繋がります。

合皮素材まるで本革、合成皮革

柔らかく軽い合皮

合成皮革とは、布地に合成樹脂を塗布し型押しをして天然皮革に近い質感に仕上げた人工素材のことです。塗布する樹脂の違いにより、ポリウレタン樹脂を使用したPUレザーと、塩化ビニル樹脂を使用したPVCレザーがあります。当店では主にPUレザーを合皮、PVCレザーをPVCと呼んでいます。
合皮は、しなやかで柔らかく、本革に近い質感をしています。手で触った時に吸いついてくるような肌触りの湿式合皮など本革と遜色のない合皮もあります。本革に比べてると安価で軽量になり易く、お手入れは濡れたり汚れた時に乾いた布で拭くだけと簡単です。本革の鞄が欲しいけど、値段やお手入れ、重さなどが気になる場合には合皮製の鞄がおススメです。ただ生地の製造から数年経つと表面が劣化して、ポロポロと剥がれてきますので、永く使うには不向きです。

お手入れ簡単、安価なPVC

一方、PVCは合皮よりも硬くツルツルとした質感で、汚れや水に強いという特徴があります。水に強いので、お手入れは合皮よりも簡単で、水拭きができたり、中性洗剤を使うことも可能です。大抵の場合、本革と比べて軽く、合皮よりも安価になり易いのもメリットです。現在では技術の進歩により、パッと見ただけでは合成皮革とは分からないものも多く出ていますので、コスパ重視ならかなりおススメです。ただこちらも経年劣化により表面が割れたり、硬くなったりするので、数年程度での買い替えが必要となります。

ナイロン、ポリエステル軽くて丈夫、化学繊維

「鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」

天然繊維は絹や綿、麻などがありますが、それらは動植物を育ててから原材料が手に入るため、時間と手間がかかります。それらを解消し、より加工しやすく大量生産出来るようにするために化学繊維が作られました。ナイロンは「ポリアミド」と呼ばれる石油由来の合成樹脂から作られた化学繊維です。アメリカのデュポン社が開発・商品化したものを女性用のストッキングに使われたのが始まりです。ナイロンは、元々はデュポン社の商品名でしたが、今では一般名として広く使われています。ちなみに、デュポン社の開発当時のキャッチフレーズが上記の「鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」です。
ナイロンはとても摩擦に強く、その強度は綿の約10倍と言われています。また、繊維自体に伸縮性があり、天然繊維よりずっと高耐久、濡れてもすぐに乾くので衣料のアウターやバッグなどによく使われます。天然繊維と比べると軽量なのも好まれる理由です。
但し、ナイロンは熱に弱いので乾燥機は勿論、アイロンやドライヤーなどを使用すると変形する可能性があります。また、長期間日光に当て続けると日焼け・変色が起きてしまうことがあるので注意が必要です。

世界で最も生産されているポリエステル

ポリエステルもナイロンと同様化学繊維で、天然繊維の欠点を補うために開発されました。元々ナイロンは絹を模して作られたのに対して、ポリエステルは綿を模して作られました。綿は吸水性があり、乾きにくいというデメリットがありましたが、それを補うためにポリエステルは開発されました。化学繊維は総じて繊維自体の吸水性はあまりありませんが、ナイロンよりポリエステルの方が速乾性に優れています。ポリエステルがペットボトルで有名な「PET(ポリエチレンテレフタレート)」という石油由来を主原料にしていることからもその吸水性の低さがうかがえます。現在化学繊維の中で最も多く生産されているのはポリエステルです。
先程ナイロンはとても摩擦に強いと書きましたが、ポリエステルも天然繊維と比べるとはるかに摩擦に強いです。ただ、若干毛玉ができやすい分、ナイロンの方が優れています。対してナイロンは伸縮性がありますが、ポリエステルには殆どありません。なので、バッグなどの形が崩れて欲しくないものにはポリエステルが好まれます。また、ポリエステルも熱にはあまり強くありませんが、ナイロンよりは耐熱性があります。
ナイロンもポリエステルもデニール(denier)という単位で表されます。9,000mの1本の糸の重さが1gで1デニールとなります。バッグでよく使われるポリエステルには600デニールなどがありますが、これは9,000mの600gの糸を使っているということです。ですので、デニールが多くなるほど重く(太く)なります。

帆布パラシュートにも使われている帆布

人類と共に歩み続けた帆布

帆布(キャンバス)とは「綿や麻などで織られた平織りの生地のこと」を言います。平織りとは、縦糸と横糸を交互に組み合わせた、最もシンプルな布の織り方です。その起源は分かっていないものの、エジプトのピラミッドやパキスタンのモヘンジョ・ダロ遺跡からも発掘されています。日本には室町時代に伝わったとされています。とても丈夫で破れにくく、水に濡れると水を通しづらくなり、乾いている時より10倍以上丈夫であるという性質を持っているため、帆船の材料として使用されました。それが「帆布(はんぷ)」の名前の由来です。
明治以降帆布は様々なものに利用されていきます。貨物列車のシートや牛乳配達に使われる袋、軍服やパラシュートなどにも使われました。今でもバッグや靴、椅子の張地やテントにと様々な分野で使われています。柔道などの道着に使われている刺し子地も帆布の一種です。
半面、帆布はその丈夫ゆえに重くなりがちです。同じ天然素材である皮革と比べると軽いのですが、ナイロンなどの化学繊維は元々絹や綿より軽くすることも開発当初の目的でしたので、軽さでは1歩引かざるを得ません。また、水に濡れると繊維自体に含んでしまうので、乾きにくく型崩れが起きやすいです。濡れると色が落ちたり、他のものへ色を移してしまうこともあるので、注意が必要です。
帆布の厚さを表す単位として「号」と「オンス」があります。一般的に日本国内で生産されたものは「号」で、海外から輸入されたものは「オンス」で表されています。
「号」は縦糸と横糸との密度を表し、1~11までの数値で表されます。数値が小さいほど密度が高く、重量が重くなります。
「オンス」は1平方ヤードあたりの重さを表します。数値が大きければ大きいほど重量が重くなり、生地も厚くなります。