青梅の毒について 幼い頃、梅の木に青梅がなっていて、すごく甘い匂いがするのでずっと眺めていたら、その度に祖母から「青梅には毒があるので食べてはいけない」と強く言われました。 祖母はさっぱりした性格で、自分が主張したことを相手に伝え終えてしまうと、それ以上質問はお断り、というような人でした。 けれど「知らない」とか、「分からない」など、小さい孫の質問に対して敗北を示すような態度は意地でもとらない人でした。 「じゃあ、梅干も毒がある食べ物なのか?」というような質問をすると、 「あれは塩で解毒するから大丈夫や」みたいな、よく分からない答えを面倒臭そうに返されたのを覚えています。 「梅は塩で解毒しなかったら、絶対に毒があるものなのか?」 と聞けば「そうや!!」と、少し苛立たしげに答えてくれました。 「それなら梅の花や木にも毒があるの?」 「花と木、食う奴はおらん」みたいな。うろ覚えですが。 (実際、未熟な青梅は「アミグダリン」なる毒性の物質を含有するそうで、この物質自体は危険なものらしいですが、一粒ずつに含まれる量はわずかで大量摂取しなければ中毒症状を引き起こす可能性は低い、そうです。) 秋も深まったそんなある日、衝撃的なものを見ました。 祖母が食べてはいけないと教えてくれたその梅の木の枝に、カエルやらトカゲやらサワガニやら数匹が、無惨にぶらさがって死んでいたのです。 幼い僕の目には確実に、件の「青梅の毒」の犠牲者として映りました。 おそらく、小動物は木に近づくだけでもその毒にやられてしまうのだと。 「梅、こわー・・・」と心の底から思ったものでした。 今考えるに、真相は「もずのはやにえ」でした。 ご存知の方も多いでしょうが、「もずのはやにえ」は「もず」という愛らしい小鳥の習性で、捕まえてきたエサとなる小動物を木の枝などに目立つ場所に引っ掛けて干物にしておくのです。 なぜそんなことをするのか?ですが、冬場の食料を備蓄するため、という学説があります。 しかし冬になっても食べに戻ってこず、そもそも食糧の備蓄ならもっと見つかりにくい場所に隠すのが妥当で、本当の理由はいまだ解明されていないそうです。 ちなみに、亡くなった祖父は「オスが、メスを呼ぶためのもんや」と言ってました。 大きい獲物で作った干物の傍には、よく、もずがつがいで飛び跳ねていたそうです。 今さらながら、「一理あるかも」と思います。 |