喜久水酒造

全国新酒鑑評会で4年連続金賞など、数々の受賞を誇る「喜久水」。
1944(昭和19)年、飯田・下伊那地域に点在していた37蔵が企業合同して創立しました。
飯田地方唯一の酒造メーカーとして、清酒のほか、焼酎や果実酒、リキュールなども製造している。

ライン


  • 幻の酒米
  • “幻の酒米”の復活

    飯田地方では、清酒といえば「喜久水」、というほどイメージが定着しているほど地元に愛されている銘柄。仕込みの水は地下80~100メートルから汲み上げた、環境省の名水百選に認定された「猿庫(さるくら)の泉」と同じ水系のものを使用しています。

    酒米は「美山錦」のほか、“幻の酒米”と呼ばれる「たかね錦」を地元契約農家と復活させた。昭和30年代、盛んに栽培されていたたかね錦は、美山錦の親、「ひとごこち」の祖父母の代にあたる品種で、両手分ほどの籾を手に入れ、社員、OB、関係者など多くの人たちの協力を得て栽培を始めたそうです。「“おじいちゃん”らしい、すっきりとした中に非常に優しい味が生まれます」と代表取締役の加藤昇さん。

  • 地酒を一手に担うという責任

    戦時下、政府の企業合同の要望に応じて37軒の酒造家が一つになって誕生するという、他にあまり例を見ない歴史を持つ。各蔵がさまざまな免許を持っていたこともあり、一緒になることで多様な酒を造ることができ、会社設立当時から清酒や焼酎を製造していたという。

    「造ることができたというか、逆に言えば造らなければならなかったという面もあります」と加藤さん。「例えば他の地域だと、地酒といえばいくつかある蔵のものが並びます。でも、飯田だとうち一蔵しかありません。そうなるとあらゆる種類のものを、ある程度は並べないと…という気持ちになりますよね」と話す。

    地域の酒を一手に担う。その思いが、多彩な商品展開というかたちで表われ、南信州産のかりんや梅を使ったリキュールも生産している。

  • 酒造り
  • 酒造り
  • それぞれの特徴を活かしたかたちの酒造りを

    3台の自動精米機を使い自社精米から始まる酒造りは、大きな蔵ならではの光景。仕込み方法は3タイプあり、種類によって使い分けているそうです。一つ目は醸造機械を用いて自動製麹・発酵管理を行う効率化を図ったもの。二つ目は蔵人の技を活かして丁寧に行うもの。そして三つ目は、両方の長所を取り入れた“中間サイズ”の酒造り。

    日本酒だけではなく、そば焼酎「そば二八」でも長野県原産地呼称管理制度の認定を受けている。もともと焼酎はそば・麦・米を製造していたが、2004年に県内初の芋焼酎も開始。香味の特徴を出すために、専用の麹室で製造した黒麹を使っている。「芋は秋に仕込む必要がありますが、他は1年中できるので、冬は清酒、それ以外は焼酎というふうにしています」

  • 地域の人たちにとって誇れる“地酒”でありたい

  • 日本酒全体の消費量が年々減少する中、大吟醸など特定名称酒の需要は増えている。「特定名称酒に力を入れるということもありますが、基本は変えてはいけないと思っています。特に普通酒は、多くの根強い地元のファンがいてくれるので」と加藤さん。

    基本に忠実でありながら、新たな試みも行っていく。その一つとして、海外展開も視野に入れる。「ヨーロッパでも、“sake”=“日本酒”と思ってもらえるような時代になったので」

    飯田地方ならではの酒の特徴は何かと問うと、「濃い目の料理によく合う、旨みがあってすっきりする味わいです」という答え。地域の人たちにとって誇れる“地酒”であり続けるために、更なる挑戦が続いていく。

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