安曇野の土地は砂壌土で、粒が粗い砂分が粘土よりもやや多い。粘土質の土壌と比べると、あっさりした印象の米になるという。「お米自体が主張せず、お寿司やお茶漬け、おかずにも合わせやすいのでお弁当にも向いています」と代表取締役の浅川拓郎さん。
市内の堀金地区に圃場を持ち、田植え、草刈り、収穫と北側から順番に行う。収穫後に追跡ができるようにと、なるべく圃場やロットごとに管理。同じ安曇野でも、圃場によって違いがあるという。栽培期間中は農薬を使わない合鴨農法やはぜ掛けを行うエリアもあります。「今は機械化が進んで、皆で田んぼに集まって作業をやり遂げる感覚が薄れてきちゃったので。そういう思いを共有できる場として考えています」
種まきから精米まで、一貫した自社管理。米ぬかを主体にした有機質肥料をほぼ100%使用し、農薬を極力避けた特別栽培を行っています。稲を植える間隔は一般的とされる30センチよりも広めの33センチ。栽植密度を下げることで、日当たりと風通しが良くなり伸び伸びと育つそう。「その3センチがどのくらいの差になるのかはっきりは分かりませんが、代々続けていることなので、やはり意味があるのではないかと思っています」
玄米は遠赤外線乾燥機で乾燥させ、低温貯蔵し、精米にもこだわる。「割れた米が多いと炊き上がりが全然違うんです。ふっくらした感じで、粒が際立ちますね」。一粒一粒を確認し、割れたものは取り除く。除去した量を記録して、品質向上の材料にもしているという。
さかのぼれる範囲でいうと、「12、3代目くらいじゃないかな」という浅川さん。3人兄弟の末っ子として育ち、幼少のころから農業への夢を抱いてきた。「技術だけではなく流通も学びたい」と大学へ進み、卒業後はさまざまな農業法人で研修をしたそう。
就農して10年、最近は技術面に対する思いが強い。「今後は、より環境に負荷がかからないようにしたいので、実践と研究を重ねて勉強していかないと」。自身が経験を積むことはもちろん、後進を育てたいという気持ちもある。「自分は父に『見りゃ分かる』って言われてきたんですが、そこをある程度言葉にしたり形にしたりして、理解しやすくすれば、もっと多くの人が農業に関われるんじゃないかな」
他の農作物も生産しているが、主軸は米。飯米だけではなく、酒米や米粉などは地元企業と一緒に取り組んでいます。「米離れなどと言われますが、僕は米を信じ続けたいんです」と浅川さん。「何千年も米があって、日本の人たちは生きてきた。それを粗末にしたくないんです。消費を増やす方法を考えていきたいと思っています」
お客様に良い米を届けたい、米作りを通して安曇野をPRしたい。その意識が高ければ、作業に対する姿勢も変わる。「いかにスタッフを本気にさせて、今年の米作りにどれだけ気持ちを持っていけるかですね」。思いを共有し、同じ方向を向けるように、これからも試行錯誤を重ねていく。