「ミュゼ ドゥ ヴァン」は2006年にスタートした、アルプスのフラッグシップと呼ぶべきこだわりが詰まったブランド。フランス語で「ワイン博物館」という意味を持ち、エレガントでフィネス(洗練・繊細)のあるワインづくりを目指している。当初からさまざまな品種を使ったり、同じ品種でも仕込みの方法を変えたりしながら、幅広く展開をしています。
「ワインはいろいろなスタイルがあるところが面白いんです。ミュージアム、ってなると楽しいじゃないですか」と代表取締役社長の矢ケ崎学さんは笑顔を見せる。
創業以来のモットーは「常にお客様の立場に立って考え行動しよう」。時代と共に、取り巻く環境は変化し、お客様からの要望は多様化している。だからこそ、選ばれる、喜ばれるワインづくりに真摯な思いで向き合っています。
一昔前までは、国産ワインといえば甘口が中心で、ブドウの品質を要求されることもほとんどなかった。「良いワインをつくるには、良いブドウが必要。良いものは高い価格で買うというのは、今では当たり前のことですが、当時はそうではなかったんです」
1970年代に県内のブドウ栽培農家と「アルプス出荷組合」を結成。現在は、17支部約400軒から安定的に高品質のブドウを入手しています。
また国産ブドウの需要の高まりから、2008年に農業法人「アルプスファーム」を設立し、翌年から自社栽培も開始。「ワインづくりは長いスパンで考えないと。ブドウは10~20年で良い木ができるので、10年後に何が最適なのかを見据えなければいけません」と矢ケ崎さん。今後は品種も収穫量も、現在の2倍に増やしたいという。
良い原料を活かすために、品質の管理も厳正に行っている。アルコールがない分、微生物管理など衛生管理・品質管理が重要とされるジュースも以前から製造していることもあり、その技術を応用。FSSC22000(食品安全システム認証)の認定も取得しています。
技術の向上のために、海外の工場視察や情報収集、醸造設備への投資も積極的に行っています。「やった分だけ、意外とすぐに効果が出ます。栽培も、醸造も」
それは、社内技術部のモチベーションにもなっているという。「『良いものをつくりたい』という気持ちがあれば、どんどんチャレンジできる環境をつくりたいですね。結果が出れば、仕事も楽しくなる。もちろん会社としてもうれしいですし」
ワインの消費量は、成人一人当たり年間でボトル約4本(2013年度、日本ワイナリー協会による)。「増えたと言っても年間4本、さらに国産ワインはその中の1割にも満たないのが現状です。その中でどう盛り上げていくのか、いかに良いブドウを作っていけるのかが肝心です」
今の “ワインブーム”は、しばらくは続くと考えている。その波に乗っている感覚を持つ反面、危機感も抱いています。「最終的には、『日本のワインだから高くてもいい』というところに落ち着くわけではないですよね。ブームが過ぎれば、よりリーズナブルで品質もよい輸入ワインがあればそれが選ばれるようになると思います。心してワインづくりに向かっていかないと」