「あづみアップル」は地元のブドウを使って醸すことを基本姿勢に掲げている。目指すのは、1本のボトルに込められた栽培者と醸造家の「熱い思い」を消費者に伝えるワイン。
全てが県内産というブドウは、自社農園が3分の1、残りは20軒ほどの契約農家が手掛けている。安曇野・三郷地区と池田町・青木原、近年は大町でも栽培を始めました。
「特に青木原や大町の契約農家の方々とは、実際に畑に出てブドウの様子を見て、栽培について話しながら、一緒に取り組んでいます」と管理課課長の石澤喜則さんは話す。
前身は、地元農家のりんごを加工する「梓川村ジュースセンター」。今の場所に移転した1997年からワインづくりを開始。それまで大手メーカーの原料を栽培していた青木原の畑を引き継ぐような形を取った。
そこに植えられていたのは、当時は国内であまり栽培されていなかったソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワール。両品種とも冷涼な気候を好むブドウではあるが日本では栽培が難しく、20年間試行錯誤を重ねて育てた2品種は、今では当ワイナリーの看板と呼べるものとなった。
青木原は西斜面で日照時間が長い。土壌は、貝殻をまいて石灰質にしている。「県内で垣根栽培を始めたのも、ここが最初だったのではないでしょうか」と石澤さん。恵まれた環境の上に、努力を重ねた結果が、今につながっている。
ワインはブドウの出来に左右されますが、毎年、気候によってその出来は変わります。「常に同じ味に仕上げるのではなく、そのときにできたブドウを一番いい状態でワインにすることが仕事だと思っています」。もちろん、理想の味や目指す味はあるが、そこに達することができるブドウとできないブドウがあるという現実。できないブドウでも、その状態で最良のものにする術を考えることが大切だと考えています。
特に、“造り手”としてのこだわりが自然と強くなるのが日本では育てるのが難しいと言われるソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワール。一年中畑に行き、今年の状況を見ながら準備を進めるという。
国産、そして県産ワインへの注目の高まりを感じているという石澤さん。「長野の物産展が催されれば、ワインは必ず並びます。“ワイン好き”という方からは、『長野のメーカーの、これが飲みたい』という“名指し”の要望も増えているように思います」
その流れを、ブームではなく定着させるために何ができるのか。「今のスタイルはしっかり守りながらも、大手メーカーにはできないような、自分たちの味を出していかないと見放されてしまいます」。納得できる品質のベースになるのは原料のブドウ。農家の高齢化や人材育成など取り組むべき課題もあり、高校生にワイン製造への興味を持ってもらうために実習授業も行われ、企業実習生の受入れもしているそう。「自分たちの足元をしっかり見つめて、進んでいきたいですね」