ねば塾

安心と安全の品質、ねば塾さんのせっけん作りを取材してきました♪

NAGANOマルシェ取材隊

佐久市の千曲川近くの田畑や住宅が点在する、のどかなところにねば塾の小さな建物たちが集まっています。昔ながらの釜焚きをするせっけん工場や近代的な化粧せっけん工場、手作りの事務所やグループホームなど。実はねば塾で働いている方の半数がハンデを持った方たちですが、障がい者の作るものという甘えを持たず「品質の高いせっけんを自分たちで作りたい」という信念と社会的・経済的自立を目標に地道に努力を重ね、少しずつ成長して来た会社です。
設立者の代表・笠原愼一氏を父に持ち、生まれた時からずっと髪から体まですべてをせっけんで洗い、障がい者と共に暮らし、働いてきた取締役専務の笠原道智さんにお話を伺いました。


ー ねば塾といえば、「白雪の詩」など高品質の無添加せっけんで有名ですが、もうすぐ創業38年になりますね。最初の立ち上げは1978年、代表である笠原愼一氏が27才の時だと聞いています。障がい者福祉施設の2名と笠原氏の3名で始められたということですが、そのいきさつはどういったことからでしょうか?

父は一般企業に勤めていたのですが、ボランティア活動を通してハンデがある人達を知る事になり、福祉施設で働くようになりました。そこで知り合った障がい者の方から自分の家族の結婚式なのに、障がい者ということで式に出席できないという話や家に帰りたくても帰れないという話を聞いたり、働かなくても全てが保障されている生活を見ているうちに、施設の意味はどこにあるのか、障がい者の幸せな生活はどういうことだろうと考えるようになったそうです。 施設に「自分で働いたお金で生活したい」という気持ちを持っていた二人の重度の精神障害の方がいて、一般企業に勤めるのは難しくても、誰か補助してあげる人がいれば、働けるのではないかと思い、施設を辞めてその二人の方を引き取り、一緒に生活をしながら働き始めました。それが1978年、ねば塾の始まりになります。


ー「せっけん作り」を選ばれたのは、なぜですか?

数年間は土木関係の仕事や便利屋のような仕事をしていましたが、何か自分たちで作って売りたいと思うようになったそうです。化学にも詳しかった父が、母が髪から体まで全部せっけんで洗うのを見ていて、せっけん作りは小学生の教科書にも出て来るくらい簡単な作り方なので、これなら自分たちでもできるのではないかと思い、せっけんを作ってみようと思ったそうです。ちょうどその時代は化学物質による琵琶湖の環境汚染が問題になっていたこともあり、環境を汚さない商品であることもせっけん作りを選んだ理由になります。 しかし、せっけん作りを始めたのですが、うまくせっけんが作れない、売れないと困っていた時に、東京からせっけん作りをしていた会社の親子が「長野におもしろい人がいるぞ」と噂を聞きつけて、長靴を持参で「せっけんの作り方を教えてあげるよ」と訪ねて来てくれて、塩析法などのプロの技術を教えてくれました。おかげですごく品質のいいせっけんが作れるようになり、働きに来てくれる方も売上げも徐々に増えて、今では@cosmeで賞をいただくまでになりました。


ー 現在にいたるまでに様々なご苦労があったと思います。その中でも心に残っていることやエピソードはありますか?

いろんな人がねば塾に働きにやってくるのですが、なかにはクセのある子もいましたね。落とし穴を掘るのが好きな子がいて、郵便の配達の人を穴に落としたりとか(笑)、近所の田んぼの収穫目前の稲を勝手に刈ってしまったり、逃げ出して秋田まで行ってしまったりという子もいましたね。(笑)
経営的には苦労が耐えません。肌にもいい、環境にもいいせっけんを消費者の方にいっぱい使ってもらいたいので、できるだけ販売する価格を押さえています。原料の価格もどんどん上がっているので売るだけで赤字の商品もありますが、作業する人ひとりひとりに合わせた商品も多くあります。その商品をなくすとその人ができる仕事がなくなってしまうので、残しておきたいのです。
とにかくねば塾は人に恵まれて来た会社です。せっけん作りを教えてくれた人、働いてくれる人、紹介してくれる人、せっけんの良さを口コミで広めてくれるお客さんなど、手助けてほしい時にいい人に出会えることが多いんですよ。


ー 働いている方の半数以上が障がいを持った方だということですが、福祉的補助金を受けていないということにも驚きました。まさに自立しているということですね。

今も寮母さん含めて39名の方が働いてくれていますが、そのうちの19名が障がい者の方です。色んな事はできなくても、ひとつの事をとことん突き詰めてきっちりと頑張れるところは健常者以上の力があります。ねば塾では仕事を覚えるまでは何年も付き添って教えていますが、一旦仕事ができるようになったらその人ひとりに任せています。そうすることで自分に自信を持つことができますし、いい商品を作る事で世の中に貢献しているという誇りを持って働くことができるのです。他の作業ができなくても自分の作業だけは完璧にこなせる。だからどの人が休んでも誰もその人の代わりはできない、全員が戦力で誰がいなくなっても仕事はできない状態です。ねば塾では自分で働いたお金で生きて行くという社会的・経済的自立を目標に頑張っていますが、他の福祉関係の作業所にもオリジナルのせっけん作りを勧めたり、そのお手伝いをさせていただいています。売れるものを作って意欲持って働く事で能力もどんどん上がり、一般企業でも働けるようになることにつながるのではと思っています。そして企業の側もハンデを持った人もきちんと仕事が出来ることをわかってもらえる機会にもなると考えています。世の中の人にハンデを持った人について理解してもらうということがとても大切なことだと思います。その社会福祉事業の実績を認めていただき、2009年には経済産業省の「ソーシャルビジネス55選」に選ばれ、2014年に厚生労働大臣賞、長野県知事賞をいただけたのは嬉しい限りです。


ー 社是「あれもよし これもよし すべてよし」、塾訓である「今日出来ることは明日やろう。」「失敗は他人のせい。」という言葉に思わず笑顔になってしまったのですが。

まずは話を聞いて肯定し、その人が力を発揮できる状態にすることが大事で、10やることはできなくても8できる力があるのなら7か6でやってみようよ。そうすれば自信と誇りが持てて来る。失敗しても責めたりしないことで、おどおどしないで力を発揮できるんじゃないか、ということなんです。ねば塾の名前の由来は、障がいのある者、ない者それぞれが持てる力を出し合い、共に働き、暮らすこと。そのためには今以上に「頑張らねば」「我慢せねば」「耐えねば」「尽くさなねば」「働かねば」と。そして障がい者が「根を張る場所、根場」を作らねばという想いから付けられたものなのです。


ー では、実際に工場に伺って、せっけん作りの工程を見学させていただきます。

枠練りの場合はまず、圧縮した蒸気を使い油脂を釜で焚きせっけんを作り、そのまま枠に流し入れて固めます。固まったせっけんを手作業でスライスしてカットし、数日乾燥して仕上げます。 機械練りの場合は化粧せっけん工場でせっけん素地をローラーにかけ、使った時にざらつきをなくすために0.1mm以下にします。次はせっけんによって配合する材料を混ぜ、水分を調節、練り機に投入して成形しカットします。そしてせっけん製造を終えるごとに、ねば塾では一回一回部品を分解してきちんと洗っています。

他にも透明せっけんの中に模様やロゴなどを閉じ込めたアートソープを作っています。実はOEMで人気の化粧品ブランドだったり、某有名施設や超人気動物園のせっけんなども多数作っているんですよ。こういったアートソープは時間や手間がかかりますが、手作業だからこそ少ないロットからでも作る事ができます。米寿のお祝いや結婚式の引き出物など個人の方にもご利用いただいています。かえるのキャラクターの消しゴム入りの変わったせっけんもありますよ。これはカンボジアの子供達に手を洗う習慣をつけるために作ったものです。そして、この透明せっけんのぴったり空気を入れないでラップ包装するのはかなり難しい技術です。ひとつひとつ手作業でしかできないので、ねば塾だからこそできることなのです。


ー NAGANOマルシェで販売されているのは、「白雪の詩」を始め、「やさしいせおと」、「信濃夕涼み(男涼み、女涼み)」、「うでまくり颯爽」、「ちゃんからさん(さくら、ばら)」などのせっけんの他、ちゃんからさん化粧水、美容ジェル、洗顔フォームなどがありますが、それぞれの商品の魅力をお聞かせください。

人気No1の「白雪の詩」はパーム油、パーム核油の脂肪酸を中和法で焚いた無添加のシンプルなせっけんで、泡立ちがいいのが特長です。法律上、台所せっけんという表記になりますが、化粧品原料を使い化粧品製造認可を受けた工場で製造しています。最後の袋入れやラベル貼りだけが化粧品製造の認可を受けていない工場で作業しているので化粧せっけんとは言えないのです。この袋入れやラベル貼りを重度のハンデを持った方が長年慣れた場所で作業をしているので、簡単に変えることが難しいのです。


「やさしいせおと」は大豆油やナタネ油が配合された日本ではねば塾でしか使っていないせっけん素地です。オレイン酸が豊富ですので低温でも溶けやすくお肌にやさしいタイプで、しっとりとした洗い上がりです。また、添加剤等も一切入っていないので、特に敏感肌や乾燥肌の方におすすめで、お客様でも妊婦さんや赤ちゃんに使われている方が多いですね。 「信濃夕涼み(男涼み、女涼み)」は涼しい信州の夕方の風をイメージしました。「やさしいせおと」の素地にミントから抽出したメントールとハッカ油配合で、ちょっと涼しい「女涼み」としっかり涼しい「男涼み」の二種類あります。 「うでまくり颯爽」は柿タンニンやクマザサエキス配合の働き盛りの男性向けのせっけんです。こちらはとてもさっぱりした洗い上がりです。 「ちゃんからさん(さくら、ばら)」も「やさしいせおと」と同じせっけん素地に油から作った天然のグリセリン、クワ葉エキス、サクラ葉エキス、加水分解シルクなど美肌成分を配合したせっけんです。「ちゃんからさん(化粧水、美容ジェル、洗顔フォーム)」の化粧品はすべて無添加で、国産原料にこだわっています。ヨモギ葉エキス、ハス花水、月桃葉水、ヘチマ水、桜葉エキスなど植物性の成分をふんだんに配合しています。合成保存料を使っていないことも特長でユズ種子エキス、コメ発酵液、ダイコン根発酵エキスなど日本に昔からある天然の成分を使って防腐作用を持たせています。添加物に敏感で普通の化粧品が使えない方や保湿効果を求める方におすすめです。


ー これから作って行きたいせっけんや今、企画開発中の製品があれば、ぜひお聞かせいただきたいのですが。

佐久市は酒作りで有名で13もの酒蔵があるので、酒かすを使った化粧品や、名産であるプルーンのエキスを使ったせっけんを作りたいと考えています。また、やわらかい生せっけんなども手がけていきたいと思っています。 そして、シアバターやモンモリロナイトを配合した化粧品バージョンの「白雪の詩」も作ってみたいと思っています。 あと、猫の肉球のぷにぷにした感触を再現した、触って遊べるような肉球せっけんも試作中です。実はねば塾の敷地内には猫がたくさん住んでいまして10頭くらいいるのですが、猫が増えてからせっけんの売上げが増えるようになったのです。まさに招き猫ですね。(笑)


ー 社会福祉事業所として、これから目指して行きたいことや、目標などはありますか?

もっと色んな人に働きに来てもらって、そして働いている人も成長してもらって、一般企業への就職のステップになっていけたらいいなと考えています。そしてねば塾で働いた人達が一般企業に行く事で、障がい者でもこれだけの仕事ができるんだって事をもっと知ってもらって、一般企業でも障がい者を雇ってもらえるところを増やして行って欲しいと考えています。そのためにも魅力的な売れる製品を作って行かなければならないと思っています。


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