龍門堂

木曽漆器 龍門堂さんの“食洗機対応漆器<キッチンうるし>”を取材してきました♪

NAGANOマルシェ取材隊

木曽漆器は長野県木曽地域で約400年もの歴史を持つ伝統工芸品です。 木曽地域は、木曽ひのきなどの豊富な木材資源と、漆器作りに適した気候風土に恵まれ、江戸時代から中山道随一の漆器生産地として栄えました。 今回、老舗名門である龍門堂さんが、独自の素材技術開発により、食洗機に対応する夢の漆器<キッチンうるし>シリーズを完成させたそうです。
龍門堂 漆器の質感と渋みはそのままに、気軽に日常に取り入れられる漆器たち。 美しい職人の手仕事の伝統を現代の暮らしの中で感じることは、毎日を忙しく生きる自分たちへの贅沢なご褒美になりそうです。 <キッチンうるし>の製造ヒストリーから、木曽漆器の今まで、営業部長の手塚さんに教えてもらうことができました。


ー 早速ですが、こちらが今話題の龍門堂の<キッチンうるし>ですね!
木曽漆器のお椀が食洗機でも洗えるなんて、とってもすごいことですね。

本来の漆器は、木の上に錆土(さびつち…粘土状の接着剤)と漆を混ぜた 下地塗り用のものを塗って木を平らにして、その上にうるしを塗り重ねて製品として仕上げています。 でもそれだと、使ってるうちに粘度から木に水がしみこんでしまいます。 木が熱、水に弱いんですね。 木の空気の層の隙間に水がしみこんだ状態で加熱すると、熱で膨張して気化してしまうんです。

それで粘土層が動いて、表面が割れたりはげたりしちゃってくるので、 食洗機が対応できなかったんです。 このキッチンうるしは木の中に直接塗料をしみこませ、その上にコーティングをし、 その更に上からうるしを塗り重ねています。 そういう工夫をして、食洗機で使える機能的な漆器ができました。
家庭用の食洗機だったら1,000回、3年は持ちます。 業務用の水圧の強い食洗機に対応できるものや、 電子レンジ対応の漆器開発も目指しています。

食洗機対応漆器シリーズはこちら

ー へぇ~ 革命的!!この商品の開発には信州大学の方も携わったというお話をお伺いしました。

信州大学繊維学部の感性工学課程の大学生たちに手伝ってもらいました。 彼らとなにをやったかというと 「木のお椀で食べると、ご飯が美味しく感じるのか」という実験ですね。 なんでそれをやったかというとね、弊社でうるしのお椀を作っていたなかで、 社長が「こういう木のお椀で食べると、陶器のお椀で食べるよりも美味しく感じるよね」って言ったんです。 感覚としてだけど、わかるなぁって共感できた。 キッチンうるしを開発したのも 「もっと沢山の人が使えるように、こういう漆器のお椀も食洗機で洗えるようになったらいいよね」って皆で話して、 できないかな?って考え始めたのがきっかけ。 それで、木のお椀で食べたら本当に美味しいのか、 そういうのを調べているところがないかなって探していたときに、 信州大学繊維学部の感性工学課程の人達が協力してくれることになったんです。 その過程で、 何種類かのデザインのお椀でご飯を食べてもらったりして、どういう形状が食べやすいかってことを突き詰めていって。 6月の木曽漆器祭のときには龍門堂のブースの横で、一般のお客さんにもどういう形がいいかって試してもらって。


ー 研究を重ね、考えに考えた形がこちらってことですね!

そうです。 木のお椀だとご飯が美味しく感じるかって事はそこまではっきりわからなかったんですけど(笑)、 どういう形が持ちやすいのか、手触りがいいのか、っていう研究結果に合わせた お椀のデザインになっているんです。 今、塩尻市の学校の給食の食器で使えないか、検討してもらっています。


ー 学校生活の中で、そうやって地元の伝統工芸に触れられるのは素敵なことですね。このキッチンうるし、木は何を使っているのですか?

タモを使っています。固くて丈夫な木ですね。 熱で曲がっちゃったり、歪んじゃう木もあるので、材質選びから工夫しています。


一 一概に漆器といっても、使用する木の種類が沢山あるんですね~。ますます、食洗機で洗えるってことは本当にすごいですね! 木の素材から始まり、何から何までこだわっていらっしゃって…

実はうるし自体は特別熱に弱いわけじゃないんです。 下地が浮いてきちゃったり、木が歪んできちゃったり。 そんなに熱を加えなければ普通の漆器でも問題ないけど、 食洗機っていうと一定期間熱に当たるわけだから工夫が必要ってことで。
(食洗機対応じゃない)普通の漆器も、 一般の人にもっと気軽に使ってもらいたいっていう気持ちがありますね。
漆器って「扱うのが面倒」ってイメージがあって、 丁寧に扱わなければいけない高級品、って思われてるかもしれないけど、 中性洗剤で洗って拭いてもらえれば大丈夫ですし。 昔から「二度拭かなきゃいけない」「水滴を早く拭かなきゃいけない」etc… 色々言われているけど、近年は品質が安定してきてるので、扱いやすくなってるんですよ。 <キッチンうるし>のみならず、そういうことも合わせて、伝えていきたいですね。


ー 伝統は守りつつ、現代の生活スタイルに合わせた取り入れ方ができるんですね。 全国に色々な漆器の文化がありますが、木曽漆器はどういった特徴があるんですか?

伝統工芸に認定されているのは 木曽堆朱・木曽春慶の2つの塗り方です。

▼木曽堆朱(きそついしゅ)
木曽漆器の代表的な技法。たっぷりと漆を含ませたタンポを使って「型置(模様づけ)」をする。型置された凸凹のできた面に彩漆を何度も塗り重ねる(通常12回~18回)。漆をたっぷりと使います。表面が平になったら、水ペーパーと砥石で塗面を研磨し、木の年輪に似た独特の模様が表れます。現在では色彩も色々あります。
▼木曽春慶(きそしゅんけい)
自然乾燥された原木(針葉樹)をへギ包丁などを使って柾目(まさめ)に裂いたヘギ板で木地をつくり、薄紅色の彩漆で色づけした後、生漆を何度も摺り込む。最後に透明度の高い春慶漆を塗って仕上げる。木地のもつ柾目の美しさが際立つ。

ー 木曽漆器入門に、おすすめはありますか?

摺り漆(すりうるし)のものは使いやすかったりしますね。 そのままの生漆(うるし)の色は乳白色なんですが、それを直接木に薄く塗って。 木目の美しさを生かしているんです。 値段も手頃な物が多いし、作りもシンプルで扱いやすいですね。


ー 漆器は、使う木の種類もうるしの種類も沢山あるから、組み合わせが無限ですね。

木は使う目によっても雰囲気が全然違うしね。 うるしの朱の色も、やっぱり職人によって風合いが違う。 うるしの作り方もそれぞれ微妙に違うから 「この色はあの職人さんにお願いしよう」という感じでですね。
先ほど紹介した2つの手法のほかにも、 金粉等を用いた黄金の輝きが美しい蒔絵(まきえ)、 うるしの上に彫刻で線を削り色を埋める沈金(ちんきん)という技法などが、 木曽漆器ではよく使われています。 本来、木曽地方は座卓やたんす、飾り棚などが一番得意な地域で、 そういうものの製造量が多かったですね。


ー こうやって見ると、すごくモダンな感じがしますね~! 色味も今時だったり、シンプルなものは合わせやすそうだし。 洋室に似合う家具もありますね。 うるしを塗っていく作業ってどんな行程なんですか?

何も絵などがついていない、すごくシンプルなものは うるしを塗る回数は3、4回です。 下地塗り、中塗り、上塗りという行程で、 段階によって使ううるしの質も若干違います。 この行程の間に磨きの作業もあります。

うるしは室(むろ)っていう大きな木の棚の中に入れて固めます。 室の中の湿気を70%以上にしないと漆器が固まらないんですね。 うるしは湿気がないところに置いておいても液体のままだけど、 保湿したところに置いておくと自然に固くなる。 ペンキ等と違い、漆は乾かす事が難しく、気を使う行程ですね。 乾くのに3日ほどかかるので、重ね塗りもすぐにはできないんです。


ー 漆器って、想像していたよりずっと手がかかっているものなんですね。 龍門堂さんでは、家具等のオーダーメイドもされているそうですね。

そうですね。「この部屋の、このスペースに合う家具がほしい」、「この素材の、この色のテーブルがほしい」、 「こんな絵を描いてほしい」などなど、相談していただければオリジナルで制作することができますよ。


うるしっていうのは大昔からあるものですよね? だけどこんなに手の込んだものなんて…昔の職人さん達はどうしてたんだろう?

昔の人は本当に大変だったと思いますよ。 まず木を採ってきて刻んで、そこから出てきたうるしの汁(樹液)を、ゴミ等をのぞいて精製して。 今はうるしの業者さんがいるけど、昔はそこから職人が全部やらなきゃいけなかったから。


龍門堂の店舗とショールームにならぶ30,000点以上の漆工芸品を前に、興奮気味に次から次へと質問してしまった私達。 それに対し終始ニコニコと、やさしく漆器の良さを伝えてくれた手塚さんからは、木曽漆器への並々ならぬ愛情が感じられました。 最近は、わっぱ弁当の流行などもあり、漆器とかクラフトのものへの関心が、若い人の間でもすごく高まってる気がします。 さりげなく日常に寄り添える本物の工芸。 特別な日にとっておくのも素敵ですが、きっと日常の中で使ってこそ、機能性やデザイン、耐久性を実感できるものなのでしょう。 今のライフスタイルに合う必要な変化をしつつ、昔から受け継がれてきた技術が光る、龍門堂さんの<キッチンうるし>。 食洗機で洗えるタフな木曽漆器。美しい手仕事の伝統を生活に取り入れる第一歩として、是非あなたも手にとってみてください。 また、贈り物としても新しく喜ばれる商品です。作り手のぬくもりと一緒に、特別な人にプレゼントしてみてはいかがでしょうか?


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